Studio26にエッシェンバッハさま降臨
2019年の7月に世界クラスの指揮者クリストフ・エッシェンバッハがなぜかStudio26にいらっしゃる、という信じがたい出来事がありました。
札幌コンサートホールのkitaraボランティアの情報発信誌〈Symphonia Kitara〉No.186に寄稿させていただきましたので、その記事をこちらにアップいたします。
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Studio26にエッシェンバッハさま降臨
影山裕子
「次の月曜日と火曜日にStudio26を借りられる?」
PMFに勤める友人から電話が入ったのはPMF会期真っ只中の7月中旬のことでした。夫の両親がかつて暮らした家をミニコンサートなどを催せるように改築したStudio26、数字は所在地の南26条に由来します。
「エッシェンバッハの練習に使いたいんだけど何とかならない?」「え、エッシェンバッハ?どういうこと?」混乱した頭で何とか日程を空け、共同管理者の義姉にとんでもない依頼が入ったことを伝え、お迎えする準備がドタバタと始まりました。私は夏の乱れた庭の手入れ、義姉はお手製ケーキの準備。調律師の畠さんは突然の依頼にもかかわらず夜遅くまで念入りに調律してくださいました。
20数年前、留学先のドイツから一時帰省中にPMFで働いた夏の芸術監督がエッシェンバッハでした。大通りにあった市民会館でウィーンフィルのメンバーと共演したシューマンの「ピアノ四重奏曲」で私は譜めくりを務めました。その信じ難いほどに美しいピアノの音色、崇高なまでの音楽に私は涙を止めることも、その涙をステージ上で拭うこともできず、膝にポタポタ落ちるまま譜めくりを続けました。演奏が終わり、ピアノに向かっていたエッシェンバッハが突然こちらに振り向いた時にはとっさに「叱られる!」と感じましたが、笑顔とともに手を差し出し、温かく握手をしてくださいました。私にとって宝物となった思い出です。
今回フルーティストのカラパノス氏とのデュオリサイタルのための練習にStudio26に現れたエッシェンバッハ氏。物静かななかにえも言われぬオーラを放つ氏が練習に集中できるよう、快適に過ごせるよう、息を潜めつつ義姉と交替で二階のスタッフ部屋で待機しました。二日間にわたる練習が終わり、お二人ともStudio26の環境に満足して下さったと聞きホッとしました。思い出の曲、シューマンの「ピアノ四重奏曲」の楽譜と、Studio26のピアノにサインを頂きました。Studio26は木曜と金曜はカフェ都忘としてどなたにもいらしていただけます。エッシェンバッハがピアノに残したサインを見にいらっしゃいませんか。
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