小さな笑顔の時間(入院日記その4)
朝のうちに看護師さんからその日の診察、検査、採血や各種処置などの、一日の予定が書かれた紙が渡されます。
予定の入っている以外の時間帯は、基本的に好きに過ごしていいので、院内散歩を日課にしています。
いつもの通り、歩き回っても各病棟のお仕事の邪魔になりそうもない1階の公共コーナーを何周となく歩いてからの帰りのエレベーターホールで、時間帯によっては激混みのホールが空いていました。
エレベーターを待っているのは入院患者だけ。
私の他にはお二人、片方の足を太ももから切断された年配の恰幅のいい男性と、眼帯をされた初老の女性。
エレベーターが来て、なかでは私が一番身軽に動けそうだったのでお二人に会釈をして先にエレベーターに入って「開」ボタンを押していました。
松葉杖がまだあまり慣れていなそうな男性は「ごめんね」と言いながらゆっくり入ってきて、エレベーターの奥の壁の腰より少し低い位置に備え付けられている奥行きの狭い椅子に腰を下ろし、満面の笑顔で「これ、助かるよねぇ」とおっしゃいました。
その笑顔と声の表情に、三人の小さな空間の空気がほころび、「健康な時にはなんともないようなちょっとしたことが有り難かったりしますね」などと会話を交わし、入院患者同士の連帯感からか三人とも笑顔の瞬間が訪れました。
医療従事者側の方がエレベーターに入ってこられた時、自然とその空気が終了し、いつもの空気になりました。
印象的だった男性の笑顔。
大変な手術をされ、本当に大変な時期にいらっしゃる、人生のなかでかなり辛い時期であっても、小さな笑顔の瞬間は訪れるのだな、と改めて教えていただいた気がします。
そんな瞬間が増えていくことが大切なことかもしれないな、と思いました。
一人になった時に撮影した椅子。ありがとう、椅子。
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