クララに魅せられた作曲家たちVol.1 ショパン①
クララの父親フリードリヒ・ヴィークは優秀なピアノ教師として知られていました。ヴィーク家には定期的にライプツィヒの音楽家たちが集まり、バッハのフーガが常に演奏され、その頃はまだ一般的には知られていなかったベートーヴェンの室内楽が研究され、シューベルトの新しい音楽が敬愛の念をもって演奏されていました。そしていつしかそのサロンの中心は、英知に溢れ、独創的な意見を持つヴィ-クの新しい弟子、当時やっと20才になったばかりのロベルト・シューマンが担うようになっていきます。
1831年の夏、彼らはフレデリック・ショパンの作品に出会います。音楽の中心ウィーンではなく、文化の中心パリでもない、東ヨーロッパの小国ポーランドの名もない作曲家の作品が彼らに大きな衝撃を与えたのです。
モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』のアリアを主題にした変奏曲は、最初期の作品《作品2》であるにもかかわらず、紛れもない天才の証を刻み、かつて類を見ない個性と新たな時代の息吹が満ちていました。
その頃流行していた華麗な技巧を誇示するパッセージに代わり、人間的な感情が息づくこの作品に、ピアノ音楽の新しい様式の芽生えを感じ取ったシューマンは「諸君、帽子を取りたまえ、天才だ!」という有名な言葉を含む紹介文を『Allgemeine Musikalische Zeitung(一般音楽新聞)』に投稿しています。これは彼の評論活動のデビューとなりました。
当時11才のクララはさっそくこの作品に取り組み、レパートリーに入れました。こうしてショパンの《作品2》はヴィーク家のサロンのいわば看板となり、新しい来客が現れる度にくり返し演奏されたといいます。まだ少女だったクララがこの作品について述べている文が残っています。
8日間をかけて勉強したショパンの《作品2》は、私が今までに学んだ一番難しい曲です。この独創的で霊感に溢れた作品は、多くのピアニストや教師から、わかりにくい、演奏の困難な曲だと思われていますが、それほどまだ人に知られていないのです。それをこの次の演奏会で私が初演することになっています。
ショパンの作品を公開演奏会で最初に弾いたピアニスト、という栄誉をクララは担ったのです。
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クララに魅せられた作曲家たちVol.1ショパン②→
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